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耐塩素性病原生物とは?そのリスクや対策などを詳しく解説

更新日:2024/12/17

近年、突発的な集中豪雨などにより、河川や湖、地下水などの原水となる水質の悪化や、細菌の繁殖が問題になっています。そこで衛生上の観点から、健康に被害をおよぼさないように塩素で水を消毒すると、ほとんどの細菌やウイルスなどが死滅します。しかし、微生物の中には、塩素消毒だけでは対処できないクリプトスポリジウムのような病原生物も含まれるため、それらの対策が求められます。具体的にどのような対策を講じれば安心・安全な水を作れるのでしょうか?

 

耐塩素性病原生物とは?そのリスクと感染事例、国による対策指針とは?

冒頭のとおり、地下水、河川水、ダム湖などの原水には、病原生物が存在する可能性があるため、浄水処理において衛生上の措置として塩素消毒が義務づけられています。例えば、日本の水道は、給水栓での遊離残留塩素が0.1mg/L以上を保持するように塩素で消毒し(水道法施行規則第17条)、1日1回以上の塩素消毒効果をチェックすることが義務づけられています(同第15条)。適切に塩素消毒をすると、ほとんどの細菌やウイルスは死滅しますが、塩素消毒だけでは対処できない病原生物は残っています。

 

それはクリプトスポリジウムやジアルジアに代表される「耐塩素性病原生物」です。これらは豚や牛などに寄生する原虫類で、嚢包に包まれた状態で存在する時期があります。河川などで、この状態で存在している場合には、たとえ塩素消毒で浄水処理を施しても、塩素耐性を持つため、最悪ヒトに摂取されてしまうリスクがあります。やがてヒトの消化管の中で嚢包から耐塩素性病原生物が発育し、腹痛や下痢などの症状を引き起こすことになります。特に、クリプトスポリジウムには特効薬がなく、体が弱った高齢者などは、免疫不全で致命的になるケースもあるため注意が必要です。

 

実際に起きた大規模な感染例としては、かつて米国ウィスコンシン州のミルウォーキー水道で40万人、スウェーデン水道で2万7000人が、耐塩素性病原生物に感染したことがありました。日本では平成に入るまでは、水道水が原因となった耐塩素性病原生物の集団感染例は確認されていませんでした。しかし、1996年(平成8年)に埼玉県越生町で水道水を介したクリプトスポリジウムの感染が起こり、その対応に迫られることになったのです。その後、国内では特に目立った事故はありませんが、それでも毎年いくつかの小規模な感染例が報告されています。

 

そのため、現在では国土交通省が「水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針」を公表し、基本指針と上水道の水質検査計画や、汚染の判断レベル(1~4段階)に応じた水道施設の対策を求めています。危険度の高いレベルから具体的に説明すると下表のようになります。ここでは、クリプトスポリジウムそのもの検出ではなく、指標菌(大腸菌および嫌気性芽胞菌)の有無によって対策を判断することになります。

 

 

この中で、特にレベル 4 (大腸菌や嫌気性芽胞菌などの指標菌が検出された地表水)とレベル 3 (レベル4と同様に検出された地下水)については、クリプトスポリジウムの早急な対策が必要になります。例えば、レベル 4 の施設に対しては、濁度が 0.1 度以下の維持が可能なろ過設備を整備、又はろ過した後に紫外線処理の対策。レベル 3の施設に対しては、レベル 4 と同等のろ過設備、あるいは紫外線処理による対策などを求めています。

 

クリプトスポリジウム等の耐塩素性病原生物対策に求められるアプローチ

では、こういった感染を未然に防ぐには、一体どうすればよいのでしょうか?前述のように耐塩素性病原生物は塩素耐性を持つため、塩素では消毒できません。そこで水道施設においては、原水や浄水の検査から始まり、凝集剤の使用、砂ろ過・膜ろ過、紫外線処理といった方法で病原生物を取り除く、あるいは不活化します。

 

まずは原水や浄水のチェックですが、濁度計や水質センサーで水質のモニタリングを行い、その変化をリアルタイムで監視して、濁りなどに異常があれば迅速に対応します。これにより水質の安定化と、クリプトスポリジウムなどを含む病原生物の除去効率を事前に高められます。もし、濁度が高い場合には事前に凝集・沈殿の処理を施したり、ろ過のプロセスを調整したりします。

 

例えば、浄水処理で重要なプロセスの1つになる凝集・沈殿は、原水から様々な粒子や微生物などを効率的に除去することができます。これらは凝集剤を用いて吸着させて、「フロック」と呼ばれる大きな塊を形成させます。このフロックが重力によって沈殿し、その上澄みの水から分離されます。この処理でのポイントは、濁度やpHや温度など、水質に応じて適切な凝集剤(アルミ系・鉄系・ポリマー系)を選択し、その量を調整することです。

 

ここまでのプロセスで、上澄み水はかなりキレイになりますが、まだクリプトスポリジウムなどの微生物は完全に取り切れているとはいえません。そこで次に砂ろ過や膜ろ過などの工程を経て、上澄み水に残った微生物などを物理的にろ過していきます。

 

砂ろ過には、緩速ろ過と急速ろ過がありますが、前出の凝集剤を使うのは主に急速ろ過と呼ばれる方法になります。一方、膜ろ過(★砂ろ過のコラムにリンク)は、微細な孔が空いた種類の異なる膜フィルターをろ過材に用いて、細菌やウイルスなどを除去します。その後、さらに念のため紫外線(UV)を浄水に照射して、クリプトスポリジウムなどの病原生物を不活化させることも可能です。

 

これらの対策による除去率(不活性率)は、凝集沈殿・急速ろ過では99%~99.9%、膜ろ過では99.999%~99.99999%、紫外線処理では99.9%ほどになります。下表に各対策の効果と注意点などを示します。

 

クリプトスポリジウム除去率の凝集沈殿・急速ろ過、膜ろ過、紫外線処理の比較表

 

このように、より有効な対策となる方法は、物理的に粒子や微生物などを除去できるろ過でしょう。とりわけ、ろ過方式の1つである「膜ろ過」は、MF(0.1~10μm)/UF(2nm~0.1μm)/NF(1~2nm)/RO(1nm以下)という微細な孔径の膜モジュールを使うことで、誰でも耐塩素性病原生物を確実に除去することができます。

 

最後になりますが、清水合金製作所は、こういったろ過膜の専門メーカーとして、可搬式膜ろ過装置の「アクアレスキュー」を製造・販売しています。また膜ろ過に加えて、紫外線処理が可能な装置も用意しています。これらの対策により、クリプトスポリジウムなどを含む耐塩素性病原生物を確実に除去し、安心・安全な飲料水を提供することができるようになります。

 

ほかにもアクアレスキューには、浄水の運用管理の負担を減らす「3ラク」の特長があります。1つ目のラクは、コンパクトで設置面積が小さく、可搬式で簡単に装置を持ち運んで施工が行えること、2つ目のラクは、全自動なので運用管理に手間が掛からないこと、3つ目のラクは、膜モジュールを交換するだけでメンテナンスが30分程度で済むことです。

 

また、レンタル装置も常時ご用意しているため、災害による水道施設の故障や突発的なリプトスポリジウム対策などにお困りの際は、ぜひ弊社までお問い合わせください。

 

 


アクアレスキューは自治体・水道事業体向けに多数の納入実績がございます。山間部や離島など狭小地での浄水装置の設置に困っている、いつか来る大規模災害に備えたい、といった課題・要望をお持ちの方は、ぜひ一度当社までお問い合わせください。

 


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