ろ過とは、液体(※1)に含まれる不純物を物理的に取り除く作業のことです。不純物よりも小さな孔が空いたフィルターや砂の層など(ろ過材)に、不純物が含まれる液体を通すことで、液体と不純物を分離させる手法をいいます。
ろ過は、私たちが日常生活や産業を成り立たせる上で重要な役割を果たしています。例えば、水道水の元となる河川水や湖沼水、地下水などには、泥や鉄分、有機物といった様々な不純物が含まれていますが、それらを除去して生活用水や飲料水として安全に使用できるようにするには、ろ過工程を含む浄水処理が不可欠です。
身近なところではコーヒーフィルターを使用したコーヒードリップもろ過の一種です。ろ過とはまさに、私たちのすぐそばにある身近な存在と言えるでしょう。
※1ろ過対象には気体も含まれますが、一般的にろ過機(ろ過装置)は液体、特に水を対象にしているため、本コラムでは水のろ過機(ろ過装置)について解説します。
ろ過機(ろ過装置)とは、原水から不純物を除去するための装置です。 ろ過機(ろ過装置)にはろ過材が搭載されており、基本的な仕組みとしては、入り口配管から原水をろ過機(ろ過装置)に流入させ、その原水をろ過材に通すことで不純物を除去する形になっています。ろ過された水は出口配管から送水されます。 また、自動洗浄機能を有するろ過機(ろ過装置)の場合、ろ過材に堆積した不純物を除去するための機構を備えており、高濃度の不純物が含まれる排水はドレン弁から排出されます。
ろ過機(ろ過装置)は、ろ過する対象によって様々なろ過材が使用されます。
肉眼でも見える不純物の除去など、粗めのろ過を行う場合はスクリーン(ふるい)などがろ過材として使用され、より精度の高いろ過を行う場合は、糸巻きフィルターや不織布フィルターなどが使用されます。
さらに精度の高いろ過装置には、砂の層をろ過材に用いる砂ろ過装置や、微細な孔が空いたフィルターをろ過材に用いる膜ろ過装置などがあります。
ここでは、浄水処理に使用されることが多い砂ろ過装置と膜ろ過装置を解説します。
砂ろ過とは、砂の層をろ過材に用いたろ過方法のことです。 砂ろ過には主に、水が砂層をゆっくり通過する「緩速ろ過」と、水が砂層を速く通過する「急速ろ過」があります。
ゆっくりした速度で砂層に原水を通し、砂層の表面に生成された生物膜(微生物の層)に不純物を堆積させることで水を浄化する方法です。微生物の作用により、水溶性の有機物やアンモニアなども低減させることができます。
凝集剤という薬品を用いて水中の粒子や細菌類などを凝集・沈殿させた後、上澄みを速い速度で砂層に通して水を浄化する方法です。原水の濁度が比較的高い場合でも有効、かつ多量の水を短時間で効率的に処理できることが特徴です。
膜ろ過とは、微細な孔が空いたフィルターをろ過材に用いたろ過方式のことです。 膜ろ過は、砂ろ過を含めた他のろ過方式と比較して圧倒的に高いろ過精度を誇り、nm(ナノメートル)~μm(マイクロメートル)単位でのろ過を行うことができます。 膜ろ過に使用するフィルターは、原水に含まれる不純物の大きさや種類、求めるろ過の精度などの違いによって、下記の5つに大別されます。
孔の大きさ:10μm以上
除去物質:赤血球、花粉、毛髪など
(ろ過機(ろ過装置)や水処理施設などで、微細な不純物除去の前処理として使用)
孔の大きさ:0.1~10μm程度
除去物質:藻類、原虫類、細菌類など
孔の大きさ:2 nm~0.1μm程度
除去物質:ウイルス、高分子のタンパク質など
孔の大きさ:1~2 nm
除去物質:限外ろ過膜が対応するよりも分子量の少ない物質、溶剤、農薬など
孔の大きさ:1 nm以下
除去物質:糖、塩、アミノ酸など
逆浸透膜は膜ろ過に使用するフィルターの中では最も孔が小さく、水分子以外のほとんどを取り除くことができます。そのため、海水から真水をつくることも可能です。
ろ過やろ過機(ろ過装置)は、日常生活や産業に欠かせない存在です。
どのような処理でろ過機(ろ過装置)が使われているのか、簡単にご紹介します。
上水処理とは、河川水や湖沼水、地下水などの原水を浄水場などで浄化し、飲料水として利用できる水質にするプロセスです。
我が国の浄水場では、凝集剤を用いた凝縮沈殿処理を行い、その後、砂ろ過(急速ろ過)、塩素消毒を施してから配水するのが一般的です。しかし近年では、原水に藻類や原虫類が多く含まれる場合などに、精密ろ過膜や限外ろ過膜を用いた膜ろ過を行うケースも増えつつあります。
逆浸透膜は膜ろ過に使用するフィルターの中では最も孔が小さく、水分子以外のほとんどを取り除くことができるため、海水の淡水化などにも使用されます。
飲料や薬品の製造、半導体の洗浄など、産業分野で水を使用する場合は、前述の上水処理だけでは水質が不十分な場合があります。そのため、非常にろ過精度の高い、ナノろ過膜や逆浸透膜を用いた膜ろ過などが行われます。
また、工場内で使用された水には様々な汚染物質が含まれるため、排水処理においても、精密ろ過膜や限外ろ過膜を用いた膜ろ過などが行われます。
逆浸透膜は膜ろ過に使用するフィルターの中では最も孔が小さく、水分子以外のほとんどを取り除くことができるため、井戸水などに含まれる重金属や硬度成分のろ過などにも使用されます。
様々な種類があるろ過機(ろ過装置)を選定する際は、いくつかのポイントを明確しておく必要があります。以下、そのポイントを紹介します。
一言で水と言っても、取水源は河川水や湖沼水、海水、地下水など様々です。
例えば、深層地下水は清澄であることが多く、それほど精度の高いろ過を行う必要がないケースもあります。しかし、それ以外の水を原水とする場合は、しっかりとしたろ過を行うことが必要となるでしょう。
まずは、ろ過対象となる原水の水質や状態を把握することが不可欠となります。
どのような目的でろ過を行うのかによって、必要なろ過精度は異なります。
工業用と家庭用では求められるろ過精度に大きな違いがあるため、ニーズに合った処理能力を持つろ過機(ろ過装置)を選ぶことが重要です。
求めるろ過精度に対して処理能力が低いとろ過が不十分となり、求める水質が確保できません。逆に、処理能力が過剰なものを選ぶと、ろ過材が目詰まりを起こしやすい場合もあるため注意する必要があります。
また、使う量と作る量、受水槽の容量などのバランスを検討したうえで、最適な処理量の装置を選定することも重要です。
ろ過機(ろ過装置)を導入する際や維持管理を行う際は、一定のコストがかかります。そのコストとは費用面だけではなく、例えば、砂ろ過用の砂を入れ替える際などにメンテンナンスできる人材がいるかどうか、といったリソース確保の面も含まれます。 導入条件を誤り処理能力が過剰なろ過機(ろ過装置)を選定すると、導入コスト・維持管理コストが上振れする可能性もあるため、その見極めも重要です。
当社では、非常に軽量・コンパクトかつ、高いろ過精度を誇る膜ろ過装置「アクアレスキュー」を扱っています。
浄水場の原水はもちろん、防火用水や井戸水、プールの水、さらには河川水や湖沼水、地下水といった自然水にも対応します。
原水の水質や状態に合わせて、高いろ過精度を誇る精密ろ過膜(公称孔径0.1μm)、限外ろ過膜(公称孔径0.01μm)を選択できます。
アクアレスキューは、一般的な建物の片扉から搬入可能なサイズを実現。統合が困難な小規模分散型施設や、既存水道施設への導入が容易です。
アクアレスキューは軽量・コンパクトながら非常に高い処理能力を誇ります。
処理可能な水量は、最大で1日あたり50m³。上水道施設では約140人(約50世帯)、非常時では1,600人分超(※2)の給水が可能です。
※2 災害時の必要水量を約30L/日として計算
流量の一定制御、膜逆洗や水位監視によるON-OFFなどの運転制御を自動で行います。タッチパネルで誰でも簡単に設定できます。
電源は家庭用AC100Vコンセントが使用できます。 停電時には市販の小型発電機を使用することで通常運転を継続することができます。
アクアレスキューは自治体・水道事業体向けに多数の納入実績がございます。設置場所などに制約がある、高いろ過精度とコンパクトさを両立したろ過機(ろ過装置)を探している、といったご要望をお持ちの方は、ぜひ一度当社までお問い合わせください。